リムに嵌められたネジを対角線を追って締めつつ、その回しは二回転と半分。
 指で打面の張りを確かめつつ締め上げれば何時しか指に返る反動が硬質なそれに変わる。
 ここか、というポイントで膝の上で子供をあやす様に調整したスネアをスタンドに固定して。
 椅子やハイハットの位置を修正しつつバスのペダルを踏み込めばドン、と腹に響く重音。
 フロアタムに括ってあるケースから今一番手に馴染んでいるスティックを引き抜くとタン、とスネアを叩いてやる。
 そのまましばしタップのままロールして、その速度を緩めてタップ、タップ、アップ、タップ、ダウン。
 カン!と響く金属のような硬い音にチューニングが上手くいった事を納得してから止めぬままの手をタムへと廻す。トトンと鳴ったそれが僅かにバランスを保 たないことを判断してキーを使い皮の張りを微調整。
 フロアタムもチューニングし、シンバルの位置も手直ししてよし、と頷く。
 もう一度座り直すとドド、とバスを踏み込み頭の中でドンカマを鳴らして。
 軽くスティックを打ち鳴らし簡単にカウントを取って、ワンフレーズの簡単なイントロを叩き上げて。
 そのまま流れるようにエイトビートの簡単なリズムから少しずつ足数を増やし、手数も増やして複雑な手に変えていき、ウォーミングアップの変わりにドラム と自分を鳴らしていく。
 今日もいい感じだ、と思ったところで、キィと重いドアが開いた。
「アル、もういいか?」
「うん、いつでもどうぞ」
 顔を覗かせた兄に向かってニヤ、と笑みを返せば判っていたように電源の入れられスタンバイされたアンプにギターを繋ぎ始める。
「さて、今日はどうしましょうか?」
「メジャーAブルース8回しワンセット、マイナーG同じくワンセットおまけでマイナーC7ハチロクワンセット。これを4回しでいってみっか」
「鬼ですか兄さん」
「うるせぇ、で、各々ソロ有りな」
「本当に鬼だよ、全く……」
 クキクキと音を立ててボードに書かれた進行を軽く見遣ってため息を付く弟に兄はくく、と喉で笑う。
「まぁ、たまだからいいじゃねぇの。それにオレはお前のドラムで演るの好きだぜ?」
「ボクも、アナタのリフに合うリズムを造るのは好きだよ」
 ならいいだろ、と肩からギターを下ろした兄がギュゥン、と弦を鳴らした。
「では」
「始めますか」
 乾いた木の音が、流された侭のドンカマに合わせてカウントを打つ。
 One、Two、と口ずさんだカウントを待ち焦がれるように、しなやかな指が鋼の弦をかき鳴らした。






 『SESSION〜音律の構築〜」   2005.5.9

 
 

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