何もまとわずお前の中、鎧の内へと身を預ける。
 前を閉じ、全てが闇に覆われてしまえば。
 音さえ閉ざされて己の鼓動だけがトクリトクリと響き渡り聴覚を支配する。

 膝を抱え、息を殺し、お前の魂の鼓動を感じようとタマシイを研ぎ澄まし精神を張り詰める。
 痛みすら感じない鋼の指先がこの時ばかりは何よりも鋭敏になり。
 逆に生身の身体の感覚が緩慢になっていく。

 今、背を預けている部の上にはこの血で刻んだ印があるのだと思い出し、振り向き様に鋼の指でその部に触れる。
 此処が、お前をあちらからこちらへと引きずり出す唯一の扉であるのだと。
 そう思い、そっと口唇を押し当てた。

 途端姉さん、と上ずったような掠れたような、何処か情をはらんだ声が響く。
 何をしてるの、とその言葉選びは子どものそれだというのに声色だけは男の、それ。
 その声に恐れを安堵を感じつつ、クツリと喉の奥で笑う。

 同じ血で繋がれている、その快楽は禁忌と呼ばれるもの。
 アイシテルヨ、アイシテルヨ、アイシテルヨと。
 狂ったように互いの声で紡がれるそれは呪いか、それとも祈りか。

 呪え神よ、裁け神よ、断罪しろ神よ。
 きっとそれすらはね除けて、世界の理すらもねじ伏せるから。

 とろりと胎の内から沸き立つ蜜が、いつしかお前を満たしても。
 それでもオレはこの胎の内に。
 お前の全てを閉じ込めて、お前の全てに囚われる。
 
 
 
 
 
 
 
 


『繭の中満るもの』 05.1.29


 
 
 
 

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