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ご免なさい、勢いよく姉妹です。苦手な人は読まんでやって下さい
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それ、は。
間違い無く場違いな存在ではあった。
そのまるで見るだけなら双子の人形のような存在はこの軍司令部に於いて何の必要も無い訳なのだから。
だがここにいる誰もがその存在を疑問視することは無く、それどころか大歓迎の気配すら流している。
そりゃあ殺伐とした男社会である軍でふわふわひらひらキラキラした柔らかそうな物体を追い出す野暮はいないだろうが。
さて。
そんなこんなでマスタング組の面々は歓迎しつつ若干訝し気な目をして目の前のお人形さんを見ていた。
一体どんな風貌かと言えば片方は前髪を伸ばしたさらさらの淡いハニーブロンドを背に流し、もう片方は柔らかな少し癖のある明るいキャラメルブロンドを緩
やかな波を打たせて遊ばせている。洋服は揃いのクラシカルな立ち襟のブラウスにリボンタイ、ジャケットとスカートは別珍で蜂蜜色が臙脂、キャラメルが千歳
緑である。そして長ソックスは白で靴はチョコレート色のワンストラップ。
そこまできちりと揃えているにも係わらず確実に違って見えるのは頭一つ違う身長とその視線の色(因みに二人とも光彩は見事な迄の黄金だ)そして、身体に反して余りに無駄なサイズの胸のせいだろう。
因みに大きい方は人懐こい視線にそこそこ問題無いサイズの胸で小さい方が目付きが鋭く胸がアンバランスに大きい。
それが小さいほうの若干ながらのコンプレックスになっているのはその場の面子全てが知っていることだったから今更それにツッコミ入れてギタンギタンにのされる馬鹿はまあ一人もいなかった。
而して見るだけで言葉を出し忘れていた彼等に痺れを切らせたか小さい方が不機嫌そうに右の眉を潜めて荒く息をつく。
「久しぶりに来てみたら何だよ!」
ギンと眼光鋭く辺りを見据えるその様に隣にいた大きい方が何とか押さえようとするがそんなの何処吹く風だと言わんばかりにその指はビシリと視線上にいるどっかと椅子に座った姿勢を崩さない黒髪の男を指し示す。
「来るときは連絡いれろって言うから入れたのに迎えの一つも無しかよ!しっかもなんだ?オレらは見せ物じゃねぇんだぞこの木瓜!」
「連絡は確かに貰ったがそんな愛らしい恰好で来る等想像出来る訳無いだろう。てっきりまたシャツにパンツで来て何処ぞの子息に間違えられるつもりかと」
「うるせぇや!オレだってあの人がオレ達の為に選んでプレゼントしてくれたものだなんて言われなきゃこんな恰好死んでもしねぇよ!なのにじろじろと嘗め回すように見やがってオレ達は動物園の珍獣か?確かに珍しいかもしれねぇがオレは唯の」
「国家最強かつ最小の錬金術師」
「そーそームッダに小さくてそのうえ狂暴でなーってだーれが小回り効いて喧嘩は負け知らずだけど暴れる度に胸が邪魔で仕方が無い男の夢サイズのトランジスタグラマーかー!」
「誰もそこまで言ってないだろう…それより、鋼の」
「あんだよた…じゃねぇ、少将」
このままでは無駄に言葉の応酬を繰り返すのみとロイは言葉の流れを切ってエドワードとその背後を見遣った。
「君のそのなんだ、私から見て右後方にいるお嬢さんは一体誰だね?友達を伴ってくるとは聞いていないのだが」
「…は?」
エドワードはその言葉に後ろを振り返ったり前を向いたりしていたが何時しか諦めたように溜息一つついて髪をくしゃりと掻き回す。
「あー…やっぱわかんねぇのか」
「だから言ったじゃない、きちんと最初から説明するべきだって」
後ろで控えていた背の高い方が、ひょいと顔を伸し出してエドワードを覗き込み、その柳眉を寄せて咎める。その言葉に、普段なら反論仕返すだろうエドワードが少し困った顔をして視線をそらせた。
「だってオレと一緒にこんなとこにいる奴なんてお前くらいのもんだろうが」
「だけれどみんな知らないんだし、まさかそうだとは思わないだろうし」
「でもよぉ」
「だから姉さん、自分が解っているからって相手にそれを言葉無しで伝えるのは無理なんだって何度言ったら解るの?」
ねえ……さん??
その場にいた全員が、その単語に動きを止める。
姉、と。
確かに背の高い方は今、エドワードをそう呼んだのだ。
「ちょ……待ちたまえ、話が見えない」
混乱の渦の中、ロイは額を押さえて二人を制する。
「……ご免なさい少将、姉さんいつもこの調子で本当にご迷惑ばかり」
「いや、それはイイから…ああ、そのなんだ君は、まさか」
困惑した声をにこりと笑顔で受け流し、背の高い方はふわりと笑ってこうぶちかました。
「この姿でははじめまして、ボクがアルフォンスことアルフォンシア=アルフォンス・エルリックです」
「……は?」
「アルフォンスですよ、エディレイシア=エドワード・エルリックの弟として認識されていた」
「いや、だからだな君はその」
「ちょい待ち、少将」
すい、とエドワードが手を挙げて、ロイの言葉を遮る。
「女二人だと何かと危険だし、面倒だからずっと二人とも男で通そうって決めてたんだよ。取り戻しちまったらまあ、男でいる必要は何処にもねぇし何より育てば男で通す方が難しいからな、本来の性別で暮らす事にした、それだけ」
まあそれなりに筋の通った説明を聞いても、面々は開いた口を塞ぐ事が出来ない。
全長2メートル越えの鎧と全長170センチ(アンテナ込)の兄弟が、美少女姉妹に変身して帰って来た、というとんでもない現実を目の前にして冷静でいられる方がおかしいものだろうが、有り得ない事なんて有り得ない、と言ってもここ迄変貌するとは何事か。
思考回路が凍り付く、というのは正しくこの事だろうと全員がそう思いついた瞬間。
「……あら、エド君、シアちゃん」
「ドアをかちりと静かに開けて入って来た鷹の眼様が、一瞥でその正体を言い当てて微笑んだ。
「あ、大尉。久しぶり」
「ご無沙汰してます」
二人してペコ、と頭を下げる仕草を見届けると、リザは目を細めて微笑む。
「その服着てくれたのね、よく似合ってるわ」
「そう…かな?」
少し照れた様なエドワードの仕草にリザはその微笑みを深くし、エドの頬にそっと指を沿えた。
「ええ、二人とも色白だからやっぱりそれくらい深みの有る色の方が良く映えるわ」
ますます照れて頬を薄く染めるエドワードを見つつ、アルフォンスはニコニコと笑みを浮かべてリザへと向きなおる。
「本当に有難うございます大尉。図々しいお願いですがこのお店、今度連れて行って頂けますか?仕立てもいいし何着か揃えたいんです」
「勿論よ、何時迄こっちにいられるかしら?それに逢わせていつでも連れて行ってあげるから」
「本当ですか?一週間か二週間は居る予定ですんで、後は大尉のお休みに合わせます!嬉しいなぁ、姉さんってば相変わらずどうでもいい服ばかり着るんですよ?この際だからガッツリ買って帰るつもりなんです!」
「それは素敵ね!いいお店沢山知っているから一日…いえ二、三日掛けてじっくり回りましょう?大丈夫よ、休暇なら沢山溜まって居る筈だから」
既に、会話は二人だけで進行していた。
対象になっている筈のエドワードは相当うんざりした顔でロイのデスクの近く迄避難して来て、終いには勝手に茶を入れて飲み出している始末だ。
「鋼の…」
「あんだよ」
「すまないがおとう…じゃない妹君とあれを止められないか?今週は鬼の様に忙しくてな、あれに抜けられると地獄どころの騒ぎではなくなるんだ」
「…あー、だめ。ああなったらもうオレじゃ絶対に止められない、絶対に」
無理、と言いかけた瞬間だった。
「…少将、何を仰っておいでですか?」
リザがにっこりと笑って、自動小銃のロックをガチリと外す。
「あ、いや、あのリザ…じゃないホークアイ大尉確かに休暇はあるのだが」
「休暇を申請して構いませんね、少将?」
己のデスクに向かい、申請書を書き始めたリザにロイは本気で焦り始めた。
「いやそ、のなんだ、君に居てもらわないとここに居る皆が」
「子供ではないんですから、自己管理はご自分でなさって下さい。私の休暇申請日程分の仕事は今日中に終わらせますので…では」
差し出しているのは休暇申請の書類で、一度置いたというのに再び片手に握り込んだ小火器の銃口すら向けていない。だがにっこりと微笑んだ顔の中、その瞳だけは全く笑っていない事が全てを物語る。
「休暇を申請します、許可を」
「……許可する……休みたまえ」
ロイはがっくりと肩を落とし、差し出された書類に判をついた。
きゃらきゃらとその状況を無視したまま話を続けるリザとアルフォンスを見つつ、溜め息を吐くロイに茶の入ったマグを差し出してやりつつエドワードも同じ様に肩を落とす。
「アンタだったら糸巻き車も紡ぎ手も無しに己が手で紡げるかと思ったのになぁ。相変わらず紬車と紡ぎ姫に綿を委ねるのがお好みか…まあアンタの場合その方がいいと思うけどオレは」
「……それを言うか、お前だってその手持ちの綿を己の手で紡いでもそれを染めるのはあれの手に委ねるくせに」
「それはお互い様だろ、焰の将軍?」
「まあ、そうだな」
互いの状況を解っているからこその会話だが、周りには決して理解出来ない文面に加え聞こえない音量であるが故に仲睦まじく話している様にも見えない事も無く。
それに気づいたアルフォンスが、ニコニコと笑みを浮かべながら二人の元へ寄って来た。
「何だか話が弾んでるようですね、少将」
「…ああ、まあな」
「でも、姉さんはボクのものですから」
笑顔はそのまま、アルフォンスはその瞳をすうと眇め口を開く。
「うっかり妙な事をしたら二度と素知らぬ顔で表を出歩けない様な目に遭わせてあげますから、どうぞご覚悟の程を」
にっこりと、毒と笑みを振りまいて。
もと鎧の美少女はマスタング組の男性一同に強烈な大寒波を送り届けた。
これより後、アルフォンシア=アルフォンス・エルリックは『氷雪の姫君』とこっそり呼ばれる様になったのは、まあ残しておいてもいいかもしれない。